ドリー夢小説


『絶対…の事、迎えに行くから』



いつもより強く抱きしめた腕は震え、瞳を潤ませながらそう言い残した彼は私の前から姿を消した。






















卒業…

























その日は朝から雨で、午後から気分屋のお日様が顔をだし空には虹の橋がかかっていた。









『絶対に迎えに行く

私はその言葉を信じた。きっと迎えに来ると疑いもしなかった。


そして1年、独りぼっちの2回目の春が過ぎ2年……もうあの日から3年の月日が流れた。









今、私の隣にいるのは“あなた”じゃない。


“あなた”の知らない別の人。










だって好きになってしまったの。


独りぼっちはもうイヤ。



だって“あなた”はいくら待っても私を迎えに来てはくれなかったから。



































!ごめんッッ」

「もー、10分遅刻」


「寝坊しちゃってさ」


「いいよ、全然気にしてないから。それより早く行こ?」












あたり前のように腕を組むカップル。

向かう場所は結婚式場。








3日前にプロポーズされ、は祐斗と生涯を共にする事を誓った。


今日は式場の下見…ということになる。


友達がウェディングプランナーということもあり、式場や日時はすぐ決まった。













「式が楽しみだな」


「うん、そうね」


「じゃ、俺ちょっと今から行く所あるからここで」


「はぁーい」


「送っていけなくてごめんな?」


「ううん、全然大丈夫!」


「また夜にでも電話かメールするから」


「待ってるね」










祐斗と別れ、独りの帰り道。



「式までにもうちょっと痩せなきゃよねー…よしッッ」




いつもならバスを使うけど、3ヶ月後のウェディングドレスが似合うよう少しでも歩いて帰ることにした



























ポツン…ポツン…


「雨…?」

空はまだ青々と晴れているのに突然雨が降ってきた。



「もうッ、信じらんない!!!」




は急いで屋根を探し雨宿りをした。

そして丁度反対から歩いていた男もと同じように走ってきた。











「いや〜、急に降るもんだからビックリっすよね」

男はに話しかけてきた。

「ほんと、あんな晴れてるのに……え?…龍一じゃ」


??だよな!!!!!!」













その男は、がずっと待ち続けた相手…龍一だった。














龍一が今目の前にいる。突然の再会に戸惑いは言葉を失った。



今頃になって再会するなんて…








長い沈黙の間に通り雨はすっかりやんでしまった。






「なぁ…今から予定ある?」

「ないけど」


「じゃあさ…家こない?近くなんだ。話したいこともあるし」

「えっ……」

「だめかな?」

「だめじゃないけど」

「なら決まり!行こう」



龍一は私の手を握り歩きだした。






























ねぇ龍一?

私達の時間はもう止まったんだよ。あの日、あなたが私を残して行ってしまった時に全てが終わったんだよ。

もう…動くことはないって……絶対にそうだと思ってたのに。
















歩き始めて5分、古いアパートの前まできた。

「ここだよ」



龍一は鍵をだしドアをあけた。





部屋には段ボールが何個も手つかずの状態で置いてあり、住んでいるという感じはない。






「ごめんな、ちらかってて」

「ううん」

「昨日引っ越してきてばっかでさ、何にもやってないってゆー…まぁ適当に座って。タオル探すから」

「あたしも探す!」

「いいよ、多分すぐ分かるから」



仕方なく腰を下ろそうに濡れた服が気になってしょうがない。


そうこうしていると龍一がなんとかタオルを見つけてきた。



「ほいッッ!風邪引くなよ」


「ありがとう。それとね…」


「ん?」


「よかったら服も貸してへしいんだけど…な」


「あっ,そーだな!!その衣類って書いてあるのに入ってるはずだから適当にあさってみて。俺向こうで着替えるから」

「うん、ありがとう」





段ボールに綺麗に入ってる服の一番上のを借りることにした。

さすがに男物なのでには大きくかなりだぼっとしている。









「着替えたか〜?」


「うん、いいよ」




着替え終わった龍一が部屋からでてきた。




「お茶くらいしかないけどいい?」

「ううん、いらない…」


「まぁ待っててよ」

「本当にいらないんだってば!!!!」



いきなり大声で怒鳴るに龍一も戸惑いを隠せない。





「…怒ってる?」


「怒ってなんか……怒ってなんかないよ」

「嘘、はいつもそうやって言ってた。なんか俺に言いたいことあるんだろ?」




「それはこっちの台詞よ…今まで何してたの?なんであたしを置いてったの?」


「それは…」


「あたしッッ…ずっとずっと龍一のこと待ってたんだからね?絶対に迎えに来るって言ったから、ずっと待ってたのよ」

「俺は、」

「ずっと寂しかったんだから!!」



の目からは自然と涙が流れ、今までの怒りと会えたことの喜びが心の中でぶつかりあっていた。


「寂しい思いさせてごめん」




龍一はそっとを抱きしめた。


























「おかえりなさい」




「ただいま」

























そのとき、の携帯が鳴った。



「でないのか?」


「いいよ…後でかけなおせばいいから」


「そっか」









無情にもその電話は祐斗からだった。

の中に祐斗はいない…



いるのは龍一ただ一人だけ。


それから龍一は、姿を消していた3年間何をしていたかに全部話した。











「俺は今でものことが好きだ…今度は絶対一人にしない、約束する」




龍一の真っ直ぐな言葉に喜びを感じたその時、はふと祐斗の事を思いだした。



3ヶ月後の結婚のことも。













「ごめんなさい…」

?」

「あたし、結婚するの」


「えッ……」




龍一の表情は一瞬曇りまたすぐいつもの顔に戻った。




「おめでとう」





軽蔑されると思っていたのに返ってきた言葉は正反対のものだった。


「…なんで?あたし龍一のこと裏切ったのに」

「もとはといえば、俺が悪いんだ。には幸せになってほしい」










「あたし本当はまだ龍一のこと好きよ?でも彼がいなかったらあたしは今ここにいなかったと思う。だから…だから」

「もういいよ、ありがとう」





龍一はもう一度を抱きしめた。

二度と自分のもとに返ってこないと確信した愛しい人に別れを告げるだめに。









「…さよなら」



あれから二人は会っていない。





着々と結婚式の準備は進んでいた。



しかし、日が経つごとに元気が無くなっていくの姿を祐斗は心配に思った。































「なんかあった?」


デート中だというのに、気持ちは全く上の空。
食事中、窓の外ばかり見ているの姿を見かねてついに祐斗が口を開いた。










「元彼さん帰ってきたんだろ?」


ガチャン-

は慌ててフォークを落とした。

「なんで?」

の友達に聞いたんだ」


「そっか……でもさッッ、あたしには関係ないし」


はできるだけ平然を装いパスタに手をつける。








「好きなんだろ?まだその人のこと」


「何言ってるの!あたしは祐斗が好きなんだよ、もうすぐ結婚するんだよ」


「だからこそ俺に嘘つくなって、まだ間に合う」


「祐斗はあたしのこと疑うの?」


「じゃあは俺に嘘つくのか?」


「………」



どんな答えで逃げても祐斗は私を追ってくる。

決して瞳をそらさず真っ直ぐに。



私はきっとこの先ずっとこの人にはかなわないな………










「気になるの…龍一のこと」


「お別れだな」


「…」


「結婚は白紙に戻そう。それから、俺たちも」


「なんでッ,そんな急に」


「急じゃないよ、ずっと考えてた」


「祐斗…」



「ずっと不安だった。いつかきっと元彼は戻ってきてに会うだろうって。もしそれでが変わるようなら別れようって…」


「…祐斗のこと本当に好きよ」


「俺も、のこと大好きだ。今までありがとう。もう行くな」







祐斗はレストランを後にした。


残されたは、再び外を眺め小さくなっていく祐斗を最後まで見届けた。
































いつのまにか空は黒く淀みやがて降り出した雨は豪雨となった。





レストランをでたは傘を持っていない。

容赦なく降りつける雨に打たれながらゆっくり歩きだした。












最後の角を曲がり遠くに見える家の前には、傘をさした人がポツリと誰かの帰りを待っていた。

その距離が段々狭くなり突然はその名を呼ばれた。







…?」




「…りゅ…いち……?」








龍一はびしょ濡れののもとに駆け寄った。



「おまえなんで傘さしてないんだよ!!」


「持ってなかったんだもん…それよりなんで龍一がいるのよ」


「俺は…なんか祐斗ってやつから電話あってと別れたから家の前で待ってろって言われて……?」




は今にも力つきそうな体で必死の腕に龍一にしがみついた。












「あたしのこと迎えに来てくれたの?こんなあたしなのに、龍一はまだ好きでいてくれるの?」












「あたりまえだろ?約束したじゃん、俺はを絶対迎えに来るって」


「うん…」




龍一は涙と雨でくしゃくしゃなの頬にそっと手を触れ唇にキスをした。












やがて雨はあがり、空には大きな虹がかかった。










「結婚しよう」


「はい…」









雨上がりに交わしたその約束は、二人にとって永遠のものとなる。


-おわり-

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