ドリー夢小説
朝はあんなに晴れていたのに、午後2時。

空は曇りパラパラと雨が降りだしてきた。













あたしは急いで外にいる子供達を室内へ入れ濡れた体をタオルで拭いてまわった。










「じゃあ今からみんな何がしたい?お歌でも歌おっか!!!」

『うたう〜』


外で遊べなくなってしょんぼりしていた子達も、すっかり機嫌を直し一緒に歌う。



















雨は止むどころかその激しさをましていった。





















やがてお迎えの時間となり、子供は迎えにきてくれた親に抱きつき笑顔で園をあとにする。

一人…また一人と迎えがくる中、大輝クンだけいつもの時間になっても部屋の角でポツリと取り残されていた。









「大輝クン、まだママこないね」


大輝クンはコクリと頷くだけで返事はない。

あたしはポンッと大輝クンの肩を叩いた。



「先生ちょっとママに電話してみるね。もしかしたらママくるかもしれないから大輝クンはここで待ってて」



そう言うと急いで職員室へ行き電話をかけた。




しかし、自宅も携帯も繋がらない。

もしかして何かあったのでは…そんな考えが一瞬頭をよぎったがきっと用事ができたか何かだと思い、机の引き出しからお菓子を取り出して大輝クンの待つ部屋へ戻った。


















教室に戻ると、大輝クンは窓の外を見ていた。






「大輝クン」

先生…ママは?」

「あのね、もう少しだけ遅くなるんだって。大輝クンお腹すいたでしょ?先生と一緒におやつ食べて待ってよう」

「うん!!」





おやつという言葉に反応し、大輝クンの顔に笑顔が戻った。







「他のお友達には内緒だよ」

「うん、言わないよ」



大輝クンは大好きなビスケットにかぶりつき機嫌がいい。
















そんな時だった。















先生のお迎えはまだなの??」



あたしは予想もしてなかった質問にポカンと口を開けた。
大輝クンから見たらあたしもまだまだ“子供”なのだろうか……


そしてチラっと時計を見て言った。











「先生のお迎えはね、あの短い針サンが7の所にきたらくるの」


「ふーん…じゃあ僕よりずっとずっと遅いや」





そう言うと大輝クンは再びビスケットを口に入れた。




7時まであと3時間とちょっと。









龍一が迎えにきてくれる。



今日は仕事が早く終わるから久しぶりにデートしようって龍一から誘ってくれた。

今スグにでも龍一に逢いたい……そんな気持ちを押さえて、ずっと時計をずっと見てる。


















きっと大輝クンも同じ気持ちなんだろうな。






あたしも大輝クンも、大切な人を待ってるんだ。












早く大輝クンのママ、迎えにきて…こんな想いをするのはあたしだけで十分。












教室には雨の音が無情にも響いている。






「先生………眠ぃィ…」

「んー、じゃあちょっとお昼寝しようか」




専用のカーペットを敷き大輝クンを寝かせる。
タオルケットをかけお腹をポンポン叩いてあげると、スーッと静かに寝息をたてて眠ってしまった。





あたしは机につき、書類の整理を始めた。







「あっ…」




気がつくと雨はすっかり止んでいた。






















と、園庭を走ってくる女性。



大輝クンのママだ。











「遅くなってすいません!!!!」



「いいえ。大輝クン眠ってますから、このまま連れて帰ってあげてください」










遅れた理由は聞かないことにした。






大輝クンのママは大輝クンを抱えると、あたしに頭を下げ園をあとにした。



















きっと大輝クンが目覚めた時、大好きなママが側にいてくれることが何より幸せだと思う―--…





























、起きて」



「…ん……龍一?」








寝起きで焦点がさだまらないままの視界に入ってきたのは紛れもなく龍一だった。


あたしは時計とにらめっ子をしている間に、いつの間にか眠ってしまったらしい。







「門のとこで待ってたんだけど、なかなかこねーから園長先生に入れてもらったんだ」


「あっ、そーなんだ。ごめんね、あたしスグ着替えてくるから…ちょっと待っ……」


「まだいいよ」


龍一はあたしの腕を掴みグッと引き寄せた。




「でも園長先生ここ占める時間だし」


「園長先生にさぁー、ちょっと出かけてくるから留守番しといてって頼まれたんだよね。だからまだへーき」

ニカっと笑ってあたしを抱きしめる。




「ちょっと、龍一ッッ」

「だっての保母さん見るの初めてだし」


「そうだっけ?」


「うん、チョー可愛い!!!!!」





「もぉ、龍一ったら」

恥ずかしかったけれど、嬉しかった。

目覚めた時…あなたがいてくれたことが何より。

そしてあたしの事、また一つ知ってくれたこと。













「なぁ、写メ撮りたい!!」


そう言う龍一の手には、既に携帯がスタンバイされていた。


「恥ずかしいから嫌」

「いいじゃんか〜減るもんじゃないし。ハイチーズ」




パシャッッ---








「ちょっと龍一!!!」

「ナイスショーット☆これ待ち受けにしよ」

「えっダメダメ。絶対やめてよ!!!!ちょっと龍一のバカ!!」













逢えない寂しさはきっと、逢えた時の喜びがあるからこそ乗り越えられる。

どんなに逢えない日が続いても平気。だってあなたは必ずあたしを迎えにきてくれるから。

-END-
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送
戻る